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風鈴とセミと鈴虫と

2012/11/20

明け方。
太陽がまだ出ていない時間。
少し肌寒い。
でも、どこかすがすがしい空気。
これは、秋だ。
東京の暑い夏もなんとか乗り越えて、今。
ゆっくりと秋がはじまろうとしている。
と、いうことで。
秋物を買うために、近くのデパートに向かう。
TOBやらマルイやらに。
ひとしきり秋物をそろえ、満足げに帰宅しようとする俺の目にとまる一軒の食べ物屋さん。
いわゆるデパ地下ってやつ。
食欲の秋。
誘われるように、カウンターテーブルに座る。
時刻は15時過ぎ。
時間も時間ということもあり、先客は40代であろう女性のお一人様のみ。
カウンター席のみ10席と小さなたたずまいのお店はお弁当を主軸として営業しているのだろう。
メニューも8種類と多くはない。
何千回と繰り返してきたであろう日常の接客を経て少し離れた席に座り、一番売れ行きの良い牛すき丼をオ。
きっと、680円という値段と黒毛和牛というブランドによるものだろう。
5分とせずに運ばれてくる。
軽く手を合わせ。
いただきます。
一口。
うん。
美味しい。
見た目通りの味というか、裏切らない味。
しかし、朝食昼食を食べていない俺にとって最高のご馳走だ。
二口、三口と箸がとまらない。
お吸い物がやけにうまい。
五臓六腑に染み渡るぜ。
バクバク食べていたら新しくお客さんが入ってきた。
俺との席を一つあけて座る。
60代前半らしき女性。
小さな買い物袋と鞄を手にかけ、楕円形のメガネをかけ、やや細身の身体と顔にはしっかりとしたシワが刻まれ、どこか厳しそうな印象を受ける。
けれど和服が似合いそうな凛とした空気を纏っていた。
日常の接客を受け、女性は店員さんにこう告げた。
彼と同じものを。

 

はい、かしこまりました。
と、言って奥に消えていく店員さんを尻目に、おばさんが話しかけてきた。
おばさんねぇ、あなた。
それ、おいしいかい俺えぇ、はい。
美味しいです。
なんだ、このおばさん。
初対面だよな。
いきなりなんだよ。
びっくりするじゃないか。
おばさんそうかい。
そうだろうねぇ。
さっきから見てたけど、美味しそうに食べてたからねぇ。
それ見てたら、なんだか私も食べたくなってきてねぇ。
俺はりがとうございます俺まぁ、悪い気はしないかな。
おばさんあなた、一人俺まぁ、見てのとおりでして。
おばさんあなた、彼女はいないの俺まぁ、見てのとおりでして。
余計なお世話だよ

明け方。
太陽がまだ出ていない時間。
少し肌寒い。
でも、どこかすがすがしい空気。
これは、秋だ。
東京の暑い夏もなんとか乗り越えて、今。
ゆっくりと秋がはじまろうとしている。
と、いうことで。
秋物を買うために、近くのデパートに向かう。
TOBやらマルイやらに。
ひとしきり秋物をそろえ、満足げに帰宅しようとするの目にとまる一軒の食べ物屋さん。
いわゆるデパ地下ってやつ。
食欲の秋。
誘われるように、カウンターテーブルに座る。
時刻は15時過ぎ。
時間も時間ということもあり、先客は40代であろう女性のお一人様のみ。
カウンター席のみ10席と小さなたたずまいのお店はお弁当を主軸として営業しているのだろう。
メニューも8種類と多くはない。
何千回と繰り返してきたであろう日常の接客を経て少し離れた席に座り、一番売れ行きの良い牛すき丼をオ。
きっと、680円という値段と黒毛和牛というブランドによるものだろう。
5分とせずに運ばれてくる。
軽く手を合わせ。
いただきます。
一口。
うん。
美味しい。
見た目通りの味というか、裏切らない味。
しかし、朝食昼食を食べていないにとって最高のご馳走だ。
二口、三口と箸がとまらない。
お吸い物がやけにうまい。
五臓六腑に染み渡るぜ。
バクバク食べていたら新しくお客さんが入ってきた。
との席を一つあけて座る。
60代前半らしき女性。
小さな買い物袋と鞄を手にかけ、楕円形のメガネをかけ、やや細身の身体と顔にはしっかりとしたシワが刻まれ、どこか厳しそうな印象を受ける。
けれど和服が似合いそうな凛とした空気を纏っていた。
日常の接客を受け、女性は店員さんにこう告げた。
彼と同じものを。

 

はい、かしこまりました。
と、言って奥に消えていく店員さんを尻目に、おばさんが話しかけてきた。
おばさんねぇ、あなた。
それ、おいしいかいえぇ、はい。
美味しいです。
なんだ、このおばさん。
初対面だよな。
いきなりなんだよ。
びっくりするじゃないか。
おばさんそうかい。
そうだろうねぇ。
さっきから見てたけど、美味しそうに食べてたからねぇ。
それ見てたら、なんだか私も食べたくなってきてねぇ。
はりがとうございますまぁ、悪い気はしないかな。
おばさんあなた、一人まぁ、見てのとおりでして。
おばさんあなた、彼女はいないのまぁ、見てのとおりでして。
余計なお世話だよ

おばさんなら、この食事の間だけ私の相手をしてくれないかしら

わたしも一人なの。
俺「んん、まぁ、はい。別に構いませんけど。」

 

そんなことを話しているうちにおばさんの頼んだ牛すき丼が運ばれてきた。
おばさんはぁ、これね美味しそうだわと言って、手を合わせいただきます。
といい、美味しそうに箸をすすめていた。
おばさんんん美味しいわねお吸い物も柚子の香りがしていいわねなんだか、成り行きでこんなことになったけど、最初の見た目よりなんだか朗らかな方だなぁ。
溶き卵を入れるともっと美味しいですよ。
はですけどおばさんあら、そうそうねやってみようかしら。
は、先に食べていたこともあり、おばさんが半分くらいの時には食べ終わってしまっていたのであとは、おばさんが食べ終わるまでとりとめのない話しをしていた。
孫の話しとか。
天気の話とか。
おじいさんの悪口とか。
今日買い物でいいものが買えたとか。
若いんだから彼女作りなさいとか。
笑そんな、話しを続けていた。
おばさんが食べ終わり、あがりを二人分頼みふうぅ、美味しかったわね。
ご馳走様。
と、息を吐くのを見てなんだかが急かしてしまったような気分に陥り、もんもんとしているとおばさんが、ありがとうおばさんに付き合ってくれてと、言ってきた。
いや、まぁ、そんな。
大したことしてないし。
それに、こそなんか、懐かしかったですし。
あがりを飲みながら、はふと、考えていた。
いろいろと。
じゃあ、そろそろはこれでおばさんそうね。
ご馳走様といい、伝票を取ろうとしたとき、ひょいとの伝票をおばさんに取られてしまった。
何をする、ばばぁ。
おばさんここはいいわ。
私に払わせてちょうだい。
これくらいしてもいいでしょういや、それは、また別の話しというか、なんというか。
おばさんいいから、いいから。
謙遜するときは相手を選びなさいおじいさんに怒られますよおばさん平気よ私の旦那よそれに年寄りの言うことは聞いておくものよ。
ぐ。
こんなときばかり歳をつかいやがってからにいいんですかほんとに。
おばさんいいの。
いいの。
だてに年取ってないわよ。
そう言って、おばさんは二人分のお会計を済ませてしまった。
おばさんの背中がカッコよく見えたのは人生初かもしれない。
なんだか、すいません。
かえってご馳走してもらって。
おばさんほんとにいいんだから。
やりたくてやってるんだからその代り、また、どこかでお会いしたら一緒にご飯食べてくれるかしら。
もちろん帰り道。
自転車を漕ぎながら、秋のひんやりとした風を受け流す。
けたたましいセミの声はいつしか鈴虫の声にかわり、秋の風に吹かれ、取り忘れた風鈴の音が小さく鳴っていた。

おばさんなら、この食事の間だけ私の相手をしてくれないかしら

わたしも一人なの。
俺「んん、まぁ、はい。別に構いませんけど。」

 

そんなことを話しているうちにおばさんの頼んだ牛すき丼が運ばれてきた。
おばさんはぁ、これね美味しそうだわと言って、手を合わせいただきます。
といい、美味しそうに箸をすすめていた。
おばさんんん美味しいわねお吸い物も柚子の香りがしていいわね俺なんだか、成り行きでこんなことになったけど、最初の見た目よりなんだか朗らかな方だなぁ。
俺溶き卵を入れるともっと美味しいですよ。
俺はですけどおばさんあら、そうそうねやってみようかしら。
俺は、先に食べていたこともあり、おばさんが半分くらいの時には食べ終わってしまっていたのであとは、おばさんが食べ終わるまでとりとめのない話しをしていた。
孫の話しとか。
天気の話とか。
おじいさんの悪口とか。
今日買い物でいいものが買えたとか。
若いんだから彼女作りなさいとか。
笑そんな、話しを続けていた。
おばさんが食べ終わり、あがりを二人分頼みふうぅ、美味しかったわね。
ご馳走様。
と、息を吐くのを見てなんだか俺が急かしてしまったような気分に陥り、もんもんとしているとおばさんが、ありがとうおばさんに付き合ってくれてと、言ってきた。
俺いや、まぁ、そんな。
大したことしてないし。
それに、俺こそなんか、懐かしかったですし。
あがりを飲みながら、俺はふと、考えていた。
いろいろと。
俺じゃあ、そろそろ俺はこれでおばさんそうね。
ご馳走様といい、伝票を取ろうとしたとき、ひょいと俺の伝票をおばさんに取られてしまった。
俺何をする、ばばぁ。
おばさんここはいいわ。
私に払わせてちょうだい。
これくらいしてもいいでしょう俺いや、それは、また別の話しというか、なんというか。
おばさんいいから、いいから。
謙遜するときは相手を選びなさい俺おじいさんに怒られますよおばさん平気よ私の旦那よそれに年寄りの言うことは聞いておくものよ。
俺ぐ。
こんなときばかり歳をつかいやがってからに俺いいんですかほんとに。
おばさんいいの。
いいの。
だてに年取ってないわよ。
そう言って、おばさんは二人分のお会計を済ませてしまった。
おばさんの背中がカッコよく見えたのは人生初かもしれない。
俺なんだか、すいません。
かえってご馳走してもらって。
おばさんほんとにいいんだから。
やりたくてやってるんだからその代り、また、どこかでお会いしたら一緒にご飯食べてくれるかしら俺。
もちろん帰り道。
自転車を漕ぎながら、秋のひんやりとした風を受け流す。
けたたましいセミの声はいつしか鈴虫の声にかわり、秋の風に吹かれ、取り忘れた風鈴の音が小さく鳴っていた。

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